- 2016-7-18
- 歯のコラム
親知らずの抜歯、と聞くと普通の人は、
「痛いんじゃないの?」
「腫れるんじゃないの?」
「ものすごく大変なんじゃないの?」
といった印象を持つのが普通でしょうか。
というのも友人や家族には一人くらいは親知らずの抜歯で苦労した人がいてその人の術後の感想がそのまま頭にこびりついているのでしょう。
しかし親知らずと言っても、はえ方は十人十色。
つまり抜き方も人それぞれなんです。
そもそも本当に抜く必要があるのか。
ということはもちろん抜く必要のない親知らずだってあるんです。
今回は親知らずの抜歯について本当のところを説明したいと思います。
最近の人は親知らずがきちんとはえてこない
親知らずのはえ方にもいろいろで個人差があります。昔(数十年前)と比べるとヒトのアゴの大きさはずいぶん小さくなりました。しかしそれぞれの歯自体の大きさは変わらないままなんです。20歳くらいから最後にはえてくる親知らずはスペースがないために横向きになったりします。
このことが原因で痛みが出たりします。しかし痛みの種類はいくつかに分けられます。
横向きにはえると・・・。
横向きにはえると手前の歯との間に隙間が空いて食べかすがたまりやすくなり、両方の歯をむし歯にしてしまいます。
親知らずが原因で痛みが出るパターンでも「ズキズキ寝れないくらい痛い」時はこれかも。
治療法はまずは親知らずを抜いてから手前の歯のむし歯治療をするかもしくは先に手前の歯の治療を済ませるかはむし歯の大きさによるでしょう。
しかしむし歯が大きすぎて治療できない場合は残念ながら2本とも抜かなくてはならないことも珍しくありません。
親知らずの周りの歯ぐきが腫れて痛む
横向きにはえている親知らずには正常にはえている歯と比べると変な、磨きにくい歯周ポケットができてしまいます。
ただでさえ一番奥で磨きにくいのに。さらに歯磨きを難しくしています。
磨けなければ当然腫れてしまいます。顔の半分がパンパンになってくる人も珍しくありません。
そうなると会社や学校を休まなくてはいけませんし、抜歯もすぐにはできません。
腫れがひくのを待ってからになりますので治療期間もそれなりに長くかかります。
ですので痛みが出る前の抜歯をおすすめしています。
親知らずを抜いたほうが良いその他の理由
むし歯と歯ぐきの腫れの原因になる以外にも親知らずを抜くメリットはいくつかあります。
⦁ 臭いの原因
磨きにくいということは当然食べかすが四六時中たまっています。
例えるなら台所の三角コーナーです。キレイに掃除されている三角コーナーは当然臭いません。自分自身の口臭というのは恐ろしいもので全く自覚できない人がほとんどです。
親知らずを抜けば食べかすが溜まりにくくなるので口臭も減っていくのです。
⦁ 手前の歯を押してしまう→歯並びに影響が。
これは長期的な話ですが、手前の歯を後ろから押し続けると前歯の歯並びががたがたになってしまうこともあるようです。
〜注意〜
横向きにはえている親知らずは抜いた方が良い場合がほとんどですが、他の歯と同様、正常にはえている場合、かつきちんと上下の親知らずでかみ合っている場合は抜かなくても良いようです。歯科医院でレントゲンを撮って歯科医師にしっかりと説明してもらいましょう。
痛くなったら
痛みの原因は食べかすなどの汚れです。汚れを減らしておけば抜歯の日までの痛みも減るでしょうし、麻酔も効きやすくなるようです。また、抜歯後の傷の治りも早くなります。
ともかくまずは歯科医院に電話して診察してもらいましょう。
抜歯の日までは
どうせ抜くからといって親知らず付近を不潔にするのは良くありません。
できる限り清潔な状態で抜歯当日を迎えましょう。
睡眠不足や二日酔いは禁物です。
心臓や脳の大手術ではありませんが、出血しますし顎の骨にも少なからずダメージがかかります。
身体が疲れていると免疫も当然落ちてしまいます。安静を心がけましょう。
抜歯翌日は
歯を抜いた翌日は穴の状態や歯ぐきの治り具合をチェックしてもらいましょう。
消毒も同時にやってもらえるはずです。
さらに1週間後には歯ぐきを縫った糸を取ってもらいましょう。
もし痛み止めが足らなくなったら遠慮なく電話しましょう。
抜歯した付近の掃除の仕方は傷の大きさによって異なりますので担当の歯医者さんの指示に従いましょう。
抜歯の手技、お金
⦁ 簡単な抜歯
横向きではなくまっすぐはえている場合は麻酔を含めても10〜20分程度で終わります。保険で2,000円くらいでしょう。
⦁ 横向きにはえている難しい抜歯
一般的には1時間くらいで終わります。しかしはえ方によってはそれよりも時間がかかることもあるようです。保険で5,000円くらいです。
⦁ さらに難しい抜歯
親知らずの根っこの先が下顎管と言って神経と血管の集まり、に接している時は抜歯前にCT撮影をして安全に抜けるようにします。CT撮影をすると、一般的なパノラマレントゲン写真では見えなかった骨や歯の位置関係が3次元的に正確に分かるため抜歯時間も短くなり、それによって術後の痛みも比較的少なくなるとも言われています。費用は3,000円くらいです。
抜歯後の注意事項
⦁ もらったガーゼをしっかりかむ
これは圧迫止血、といって出血を抑えるためのものです。
術後30分はしっかりとかみましょう。
もしその後出血してきたら替えのガーゼをもう一回かみましょう。
出血は一般的には30分程度でおさまるようです。
⦁ うがいをしすぎない
歯を抜くと当然穴が空いてしまいます。
そこに血が溜まりそしてその血が固まることで流れ出てくる血を止めてくれます。
うがいをしすぎるとせっかくできた血の固まりが流れ出てしまいます。
血の固まりが気持ち悪い時や口の中に溜まってしまった時は唾をぺっと吐き出す程度にしておきましょう。
⦁ 激しい運動は避ける
抜歯当日の激しい運動は血の流れを良くしてしまい、再び出血させてしまいます。
同様に当日は熱い風呂に長時間入るのは避けてシャワー程度にしてゆっくりと過ごして下さい。
⦁ 薬はしっかり飲む
痛み止めと抗生剤をもらうと思います。
痛み止めは痛くなければ無理に飲む必要はありませんが抜歯後1時間くらいで麻酔が切れてくるタイミングで飲むのも良いかもしれません。
抗生剤は処方された分は全て飲みきります。
痛くないからと言って飲まないのは感染のリスクをあげてしまいます。忘れないように飲みきりましょう。
⦁ 冷やしたり温めたりはしない
冷やしすぎたり温めすぎたりするとむしろ治りを遅くしてしまいます。何もせずに安静を心がけましょう。
その他
傷がある程度治ってくる1週間くらいまではできるだけ反対側でかむようにしましょう。もちろん刺激物(辛いもの、硬いもの、熱いもの、またタバコも)は避けます。舌で触るのも不潔です。
歯磨きはいつから?
抜歯当日は親知らず付近は歯ブラシを当てないようにします。
翌日からは手前の歯をなでるように優しく磨くと良いようです。
口腔内を清潔に保つためにうがい薬を処方してくれる歯科医院もあります。
いつ治るの?
痛みがおさまるのは1週間から10日くらいが平均のようです。
しかしどれだけ大変だったか等によって前後することもあります。
穴が完全にふさがるのはもう少し時間がかかります。
数ヶ月単位で少しづつ骨ができてきます。
もちろん食べかすが穴の中に入らなくなるのも数ヶ月はかかるはずです。
抜歯後の偶発症
親知らずの根の先が神経に接している場合、抜歯後に下唇の半分くらいがしびれた感じが残ることがあります。ほとんどの場合は数日、もしくは数ヶ月でおさまるようですがよくならない時は抜いた歯科医院に連絡して下さい。
出血が続く
抜歯後は唾液にじんわりと血液が混じるのは普通のことで心配ありませんがだらだらと多量に出るようなら以下のことを行って下さい。
まずは、もらったガーゼ、なければ薬局で買うかもしくはティッシュを四つ折り、八つ折りにして硬くします。それを抜歯した部位で強く噛みます。30分も噛んでいれば出血は収まっているはずです。
それでも止まらない時は歯科医院に電話しましょう。診療時間が過ぎていれば救急病院に電話します。119番でつないでくれます。
ではいつ抜くべきか?!
抜けるならなるべく早いタイミングをおすすめします。
痛みが出ていなくても知らないうちに手前の歯をむし歯にしていたり、歯ぐきに食べかすが多量に溜まって口臭の原因になっていたり。今後親知らずのせいで様々な不具合が出ると分かったら早く抜いた方が賢明でしょう。早めに抜けば結局は痛みは一番小さいのです。治りも早いですしね。
だいたい20代前半で抜くことが多いようです。
高齢の抜歯は街の歯科医院では嫌がられます。全身状態、服用薬など条件は悪くなる一方ですから。
まとめ
親知らずの抜歯は人生の中でも一大イベントです。
しっかりとした知識を持って臨みましょう。
必要以上に怖がるのも無駄ですし何も知らずに抜歯して大変な目にあっても後悔しか残りませんからね。
(この記事の監修: 中目黒リバーサイドデンタルクリニック 院長 野田潤一郎 先生)