- 2024-4-28
- 歯のコラム
歯医者から抜歯の提案を受けると、多くの方が不安に思われることでしょう。自分にできる限りの方法を探し、どの道を選べばよいか途方に暮れることもあるかと思います。抜歯が推められるにはそれなりの理由がありますが、今回は、そうした状況で考えられる最終手段をご紹介します。担当医と十分に話し合った上で進めることが肝心です。
1.抜歯の理由とその代替手段
1−1.根だけが残った進行した虫歯
虫歯が進行し、根だけが残ってしまうと、歯茎の内部に虫歯菌が侵入し、感染が歯や歯茎を支える骨にまで及びます。これにより歯茎が腫れ、痛みや口臭の原因になるため、抜歯が必要になる場合があります。
抜歯以外の治療のオプション
根が歯茎の中に1cm以上残っている場合、以下の方法で歯を救うことができるかもしれません。
・自費診療で行う部分的矯正により、歯を歯茎から引き上げる方法、費用は約10万円
・一度歯を抜歯して根の1/3程度を露出させる方法、保険適用で患者負担は約3,000円
・歯周の骨を削り、歯茎を下げる方法、保険適用で患者負担は約10,000円
1-2. 根尖部に膿が溜まってしまった症例について
歯の神経が死んだり、根管治療が不完全であった場合、根の先端に膿が溜まることがあります。この膿は次第に拡がり、周囲の骨を侵していきます。根管治療を行っても痛みや膿みが収まらない時は、顎の骨への感染が進み、骨髄炎や蓄膿症を引き起こすリスクがあるため、抜歯が必要になることがあります。
抜歯以外の治療のオプション:
・根管治療の再試行: マイクロスコープやCTを使用して行う精密な治療で、健康保険適用時は患者負担が約5,000円です。
・歯茎を切開し膿袋を除去後、根の先に蓋をする処置: 健康保険適用時の患者負担は約10,000円です。
・抜歯してから膿袋を除去する処置: 健康保険適用時の患者負担は約10,000円です。
1-3. 重度の歯周病により大きく動揺する歯
重度の歯周病は歯を支える骨を溶解させ、歯が大きく揺れるようになります。この状態は抜歯を必要となることがあり、隣接する歯にも悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、歯周病菌は血流を通じて他の器官に影響を与え、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めるとされています。
抜歯以外の治療のオプション
・歯周組織再生誘導法: 歯茎に特殊な膜(メンブレン)を挿入し、新たな骨の成長を促す治療法で、健康保険適用時の患者様の負担は約15,000円です。
・エムドゲイン療法: 歯茎に骨の成長を促進する特殊なたんぱく質を注入して、減少した骨を再生する治療法で、自費診療の場合の費用は約150,000円です。
1-4. 歯根が割れた歯について
歯根が割れるとその隙間から細菌が侵入し、強い痛み、歯茎の腫れ、または口臭が発生することがあります。この状態が放置されると、顎の骨に感染し、骨髄炎や蓄膿症を引き起こす可能性があるため、抜歯が必要となる場合があります。
抜歯以外の治療のオプション:
・根の治療後、割れた部分を内側から接着し、冠で覆うことで分離を防ぎます。土台は接着力を高めるファイバー繊維を使用します。自費診療で約15,000円です。
・割れた歯を抜歯後、接着剤で元の位置に戻し、ファイバー繊維で土台を強化します。自費診療で約15,000円です。
1-5. 横や斜めに生える親知らずについて
親知らずは横や斜めに生えることが多く、隣の歯を虫歯や歯周病へと導いたり、親知らず自体が腫れや口臭の原因となることがあります。
抜歯以外の治療のオプション:
・歯の移植: 親知らずの周囲の歯を抜歯する必要がある場合、親知らずを移植する方法です。保険診療で約7,000円です。
・歯の自然移動: 上顎の親知らずの前の歯を抜歯すると、その位置に親知らずが自然に移動することがあります。保険診療で約3,000円です。
・部分矯正: 親知らずの前の歯を抜歯後、矯正治療により親知らずを適切な位置に移動させます。自費診療で約150,000円です。
1-6. 歯列から大きく外れた八重歯などの歯について
八重歯や大きく歯列から外れた歯は、周囲に汚れが溜まりやすく、それが隣接する歯にも虫歯や歯周病を引き起こし、最終的には複数の歯が影響を受けることがあります。このため、時には抜歯が適切な処置となることがあります。
抜歯以外の治療のオプション:
・矯正治療: 八重歯は根が太く長いため、噛み合わせに利用するのが望ましいです。矯正によって位置を調整する際、八重歯の後ろの歯を抜歯する必要があるかもしれません。部分矯正は自費診療で約150,000円、全体矯正では600,000円から1,000,000円の費用が見込まれます。
・歯の移植: 抜歯が必要な別の歯がある場合、ずれている歯を移植する方法もあります。これは自費診療で約50,000円です。
抜歯が推奨されるその他の理由
2-1. 乳歯が永久歯の生え変わりを妨げている場合
永久歯が生えてくる過程でなかなか抜けない乳歯があると、新しく生えてくる永久歯の位置がずれる可能性があります。このような場合、抜歯が適切です。
2-2. 過剰歯が存在する場合
過剰歯とは、正常な歯数を超えて存在する余計な歯のことです。これは特に上顎の前歯部分に見られることが多く、歯並びに悪影響を及ぼすことが一般的です。前歯の妨げになったり、歯間に隙間が生じることもあるため、多くの場合、抜歯が選択されます。
2-3. 矯正治療における抜歯の必要性
矯正治療を進める中で、歯を抜く必要が生じる場合があります。これは、特に顎のサイズに対して歯が大きすぎるときに行われます。適切な抜歯によって顎と歯のバランスが取れ、適切な咬合が得られるようになります。
最新情報:抜歯した歯を歯髄細胞バンクに登録
抜歯した歯の歯髄細胞は、将来的に再生医療が必要になった際に活用するために、専門の施設で冷凍保存しておくことが可能です。
まとめ
抜歯が必要となるのは、該当する歯が身体全体や隣接する歯に悪影響を与える場合です。歯を無理に残すことで、他の歯が損傷したり、健康問題を引き起こすリスクもあります。抜歯の決断は、担当の歯科医師と十分に相談した上で行うようにしましょう。